19歳女の話

追い詰められた瞬間を書きとめていくので見てください、20歳になりました

ヤマアラシのジレンマ

中学二年生だった私の教科書は数式が載った本と名文の載った本とエヴァンゲリオンだった。登場人物の機微や話の内容はいまいち理解出来なかったけど、チルドレンたちは同い年でミサトさんは美人で初号機はカッコよかった。私もチルドレンに選ばれないかな、ってテレビのリモコンを握ってた。

リツコさんが言ってたヤマアラシのジレンマがとても印象的で、リツコさんがミサトさんにその話をするシーンの時、当時の自分が小学生の時からずっと片思いして大好きだった幼馴染のある人の事を思いだしていた。近ければ近いほどいいのにな、振り向いてくれればなとぼんやり思ってた、片思いだったからね。



高校三年生の秋、その大好きだった人と付き合うことができた。それまでに何人かと付き合ったりしたけど1ヶ月も待たずに別れてしまっていた。ただ、好きになれなかった。でもその人はやっぱり特別で。
何年もの思いをついに果たすことが出来て本当に心の底から幸せだった。一週間のうち五日間は一緒に居たし、遠くに出かけたりはしなかったけど、夜中にドライブしたり麻雀教えてもらったり紙粘土でいかにクオリティの高いものを作れるかとか、しょうもないけどすごく楽しかった。何も言わなくても何考えてるか分かったし、分かられてて、喧嘩もしたことなく彼氏と制服ディズニーとか旅行とか行く友達が羨ましくなくて、不思議な感じだった。あんなに何年も好きだったのにもっと好きが増した気がしたし、ずっとこういう風に居られるんだろうなって、甘い女子高生の鏡みたいなことを思って、ずっと笑って、泣いたことがなかった。

長々書いたけど、要するにすげー好きだったんだわね。


彼は高校を出てすぐ働き始め、私は専門へ進んだ。
けれど、彼は仕事を3ヶ月ほどで辞めてしまった
その頃自分は初めてと言えるほどに勉強をしてテストに備えていた。
ただ、余裕がなかった。自分が頑張っているのになんでこの人は頑張らないのだろう、と思ってしまった、思いやりの欠けた、他人のペースを理解できない幼稚さ。
就職するのにどれだけ努力していたか、どれだけ頑張って仕事をしていたかを一番近くで知っているからこそ責めたくはなくて、でも納得がいかなくて苦しんだ。新しいステージに進んで丁度良い距離を見失ってしまった。



自分が思っていることを言ってしまえば楽なのかもしれないけれど、傷つけるのも嫌だ、嫌われてしまうのも怖い、それに努力していたのも知っているからそんなこと言いたくない、でも、辛い。ぼんやりリツコさんの言ってたことを思い出した。

結果的に好きだった人になった。初めて泣いたし、何十年も一緒に居るのに(付き合った期間はそれに比べれば短かったけれど)初めて泣いたところを見た。丁度いい距離感がわからなくなってしまった。暖かさを分けられないことも、自分に向いてるように思える針が目の真下を刺すような痛みも苦しかった。自分の身勝手さ、相手の都合や気持ちを嚥下できない幼さを心の底から恥じて呪った。離れることで楽になろうとし、その通りに動いた。

後悔はしていない。多分、これからもしない。あのまま一緒に居たらきっと私は酷く傷つける言葉を使っただろうと思うから。
傷つけ、つけられる覚悟がなかった。



ミサトさんは変わらず美人で初号機はカッコいい、けれど、チルドレンより年上になりパイロットになる事は無くなって、2014年も過ぎた。
エヴァの内容も理解できるようになりリツコさんの言っていたヤマアラシのジレンマも、ほんの少しだけ分かった気がする。
変化、成長、幼稚さ、愚かさ、純真、汚れ、
リモコンを握ってた手は、彼の手へ、そしてまた違う人の手を握って、あの頃より少し前に進んだ気がしたから、スマホを握って、過去を清算しようと、書きなぐった。けれど、わたしは本当に進んでいるのか?誰もわからない


自分は、自分勝手だ